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ただのメモです。

流線と流跡線と流脈線

ここの図がわかりやすいので見てください。
もっと知りたい! 熱流体解析の基礎14 第3章 流れ:3.2.3 流線と流脈線, 流跡線|投稿一覧

イメージが付いたら式で表しましょう。

流線

ここ見てください。
ベクトル場と流線 [物理のかぎしっぽ]

流線の方程式は次の通り
\displaystyle \frac{dx}{v_x(x,y,z,t)}=\frac{dy}{v_y(x,y,z,t)}=\frac{dz}{v_z(x,y,z,t)}
これを積分すれば良い。

たとえば、一定一様な速度場\boldsymbol{v}(x,y,z,t)=(V_x,V_y,V_z)のとき、上の式に代入してそれぞれ積分すれば、
\displaystyle \frac{x}{V_x}+C_1=\frac{y}{V_y}+C_2=\frac{z}{V_z}+C_3
別々の変数の式がイコールで結ばれてるのでこれは定数で、それをkとでもおくと、
{\displaystyle 
\begin{eqnarray}
  \left\{
    \begin{array}{l}
      x=-V_xC_1+V_xk =x_0+V_xk\\
      y=-V_yC_2+V_yk =y_0+V_yk \\
      z=-V_zC_3+V_zk =z_0+V_zk
    \end{array}
  \right.
\end{eqnarray}
}
となり、これは\boldsymbol{v}=(V_x,V_y,V_z)に平行な直線たちです。kは媒介変数。
予想通りの結果になってうれしいですね。

ベクトルで表すなら、
\boldsymbol{x}(s) \parallel \boldsymbol{v}(\boldsymbol{x}(s),t)
とか、
\boldsymbol{x}(s) \times \boldsymbol{v}(\boldsymbol{x}(s),t) = \boldsymbol{0}
ですね。sは媒介変数です。

流跡線

流線の方程式に似せて書くと、
\displaystyle \frac{dx}{v_x(x,y,z,t)}=\frac{dy}{v_y(x,y,z,t)}=\frac{dz}{v_z(x,y,z,t)}=dt

ってなるんですが、気持ち的にわかりやすいのは

{\displaystyle 
\begin{eqnarray}
  \left\{
    \begin{array}{l}
      \dfrac{dx}{dt} = v_x(x,y,z,t) \\
      \dfrac{dy}{dt} = v_y(x,y,z,t) \\
      \dfrac{dz}{dt} = v_z(x,y,z,t)
    \end{array}
  \right.
\end{eqnarray}
}

のほうだと思います。

例題は自分で適当に探してください。たぶんv_x=U_0\,,\,v_y=U_0\cos{(kx-\omega t)}\,,\,v_z=0の2次元の例が出てくると思います。

ベクトルで表すなら、さっき出した式そのまんまで、
\displaystyle \dfrac{d\boldsymbol{x}}{dt} = \boldsymbol{v}(\boldsymbol{x},t)
です。

流脈線

同じ点でインクをポタポタ垂らしたらできる曲線です。

って言われると流跡線と同じになりそうな気がしませんか?
たしかに落ちたインク1滴1滴は流跡線を描くし、落とされた点を必ず通るんですが、それぞれの流跡線が同じとは限りません。だって出発時刻が違うから。
時刻が違えば同じ点でも(定常流や特殊な場合じゃない限りは)違う速度(ベクトル)をもつわけで、その後にたどる道のりもバラバラになります。

定式化ですが、一般を考えるアタマが足りないので、具体的なのを次の例で見て満足してください。

具体例(2次元流れ)

なんかやたらよく見る例を紹介しておきます。

さっき流跡線のところで言った、2次元の速度場が v_x = U_0\,,\, v_y=V_0\cos{(kx-\omega t)}のときを考えます。

まず流線がどんな感じか見ましょう。
 \displaystyle \frac{dx}{U_0}=\frac{dy}{V_0\cos{(kx-\omega t)}}
変数分離して積分してやれば、
 y = \dfrac{V_0}{kU_0} \sin{(kx-\omega t)} +C
となります。これが各時刻で速度を繋げた線になります。

Desmosで図かいたんで値てきとうにイジって遊んでください(表示されないときはリンク先で見てね)。
www.desmos.com
どんな場やねんこれ


では流跡線はどうなるでしょうか。
 v_x = U_0\,,\, v_y=V_0\cos{(kx-\omega t)}を流跡線の式に入れてやると、
{\displaystyle 
\begin{eqnarray}
  \left\{
    \begin{array}{l}
      \dfrac{dx}{dt} = U_0 \\
      \dfrac{dy}{dt} = V_0\cos{(kx-\omega t)} 
    \end{array}
  \right.
\end{eqnarray}
}
計算してやるとtでのパラメータ表示になるんですが、わかりにくいのでtを消してやると、
\displaystyle y=\frac{V_0}{kU_0-\omega}\sin{\left(\left( k-\frac{\omega}{U_0} \right)x+\frac{\omega}{U_0}C_1\right)}+C_2
となります。これが流跡線。
ちょっと上にスクロールして見比べると、\omega=0のときに流線と一致することがわかります。これは速度場が時間に依存しないとき、すなわち定常流であるときの特性です。
ちなみに、定常流の場合、流線・流跡線・流脈線の3つが一致します。これを色付き流線と呼ぶそうです。

これもDesmosで描画しておきました。
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流線と流跡線を合わせて表示すると、粒子の流れがよくわかります。
青色が流線で赤色が流跡線です。粒子の動きを追いやすいようにスロー再生しています。
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最後に流脈線を考えましょう。
まずt=t_0で点(x_0\,,\,y_0)を通る粒子の流跡線を特定します。
つまり流跡線の積分定数を決めるってことです。
さっきはtを消した流跡線の式を書いちゃったんですが、消さずに書くと、
{\displaystyle 
\begin{eqnarray}
  \left\{
    \begin{array}{l}
      x = U_0t+C_1 \\
      y = \dfrac{V_0}{kU_0-\omega}\sin{((kU_0-\omega)t+kC_1)}+C_2 
    \end{array}
  \right.
\end{eqnarray}
}

これが時刻t_0(x_0\,,\,y_0)のときを考えるから、安直に代入してやれば、

\displaystyle
C_1=x_0-U_0t_0\\
C_2=y_0-\dfrac{V_0}{kU_0-\omega}\sin{(kx_0-\omega t_0)}

ってなって、流跡線の式に戻すと、

{\displaystyle 
\begin{eqnarray}
  \left\{
    \begin{array}{l}
      x=x_0+U_0(t-t_0) \\
      y=y_0+\dfrac{V_0}{kU_0-\omega}\{ \sin{( (kU_0-\omega)t+k(x_0-U_0t_0) )}-\sin{( kx_0-\omega t_0 )} \} 
    \end{array}
  \right.
\end{eqnarray}
}

となります。不格好ですが後でいじるのでそのままにしておきます。
これが時刻t_0(x_0\,,\,y_0)を通る(通った)点の媒介変数表示で、tを動かすとさっきのアニメーションの白丸〇みたいになります。

あとはこの2つの式からt_0を消してやれば良いですね。
xの式からt_0を出してyの式に代入して、和積公式でゴチャゴチャすると、
y=y_0+\dfrac{2V_0}{kU_0-\omega}\sin{\left( (k-\frac{\omega}{U_0})(x-x_0) \right)}\cos{\left( \frac{1}{2}(k+\frac{\omega}{U_0})x + \frac{1}{2}(k-\frac{\omega}{U_0})x_0 - \omega t \right)}
これが流脈線の方程式です。

式で見てもなんもわからんので図示しますね。

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ポインターのある位置にインクをポタポタ落とした時に描かれる曲線です。ポインターは動かせるので遊んでみてください。
移動する白丸〇をインクの先頭だと思って見れば、流脈線が形成されていくイメージがわくんじゃないでしょうか。
あたりまえですが、実際の流脈線はポインターの右側にしか存在しません。ポインター左側の曲線は、将来的に点(x_0,y_0)に重なってインクが落とされるところだと解釈できます。

で、これを流線や流跡線と重ねて表示すると、納得がいくわけです。
青色が流線、赤色が流跡線、橙色点線が流脈線です。
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橙色の流脈線が、青色の流線に沿って拡がったり集まったりするのがわかりますか?
流脈線上の各点は、流線に沿って動く粒子だということが理解できますね。

ポインターを動かしたりして遊んでください。
それと、\omega(Desmosではw)がゼロのとき、流線と流跡線と流脈線が一致することを確認してみてくださいね。


これ以上グラフで遊ぶとページの表示に時間がかかるので終わりましょう。お疲れさまでした。